仕事は楽しいかね?
 
  あなたの仕事観を揺さぶる180ページの物語。新しいアイデアというのは、新しい場所に置かれた古いアイデアなんだ!  
著者
デイル・ドーデン <訳/野津智子>
出版社
きこ書房
定価
本体価格 1300円+税
第一刷発行
2001/12/10
ご注文
ISBN4−87771−078−7

ヒーフリー、トレヴァー、ジョエルに捧げる

読めばすぐ実践できるすばらしいアイテアにあふれた本だ。
だが、本書がユニークなのは、単なるアイデア本で終わっていないということ。
何と言っても、話(ストーリー)が面白い結末を読み終えてしまうのが残念になるほどだ。
─―デイヴ・トーマス(ハンバーガーチェーン、ウェンディーズ創設者)

あなたの人生を一瞬にして変えるアイデアとツールにあふれた本だ。
ケン・ブランチャード(『1分間マネジャー』などの著者)

子どもはみな、生まれながらに芸術家だ。
問題はいかにして芸術家であり続けるかということだ。
─―パブロ・ピカソ

子ブタで子ブタを超えることはできない。
(アニメ映画「三匹の子ブタ」の続編をつくる計画に反対して)
─―ウォルト・ディズニー

 

仕事は楽しいかね?

不思議なことに、不運は得てして好運に変わり、好運は得てして不運に変わる。
好運も不運も、私はもはやあまり信じなくなっている。
あるのはただ、巡り合わせだけだ。

たとえば、これ以上ないほど最悪の条件で始まったある夜の話をしよう。
まったく、五月だというのに、ひどい雪が吹き荒れていたのである。
私はシカゴから飛行機で帰路につこうと思っていたが、オヘア空港は、吹雪のために閉鎖されてしまっていた。

シカゴの基準からすれば大した吹雪ではなかったが、除雪機は夏に向けてすでに倉庫に放り込まれており、滑走路の雪を取り除くのは翌朝になるということだった(文字にするとどこか作り話のようだが、たしかに私たちはそう説明された)。
空港が閉鎖された理由が何であれ、ともかく私は愛しのオヘア空港のターミナルビルの一つに、二十六時間閉じ込められることになった。

そのときは、好運だなどとはまったく思えなかった。
私は三日前から仕事でシカゴに来ていたが、最後の会合をサボり、妻と娘と夕食を外でとれるよう、午後の早い便に乗って帰宅しようと思っていたのである。

ところが実際には、私は空港にいて、何千人という不機嫌そうなビジネスマンと騒が しい親子連れに取り囲まれていた。
家族とレストランで夕食をとる代わりに、スーツを着て床に座り込み、バッグにもたれかかって、棒キャンディー─―自動販売機にあった最後の一つだ─―を舐めるともなく舐めていた。

ふてくされたような思いでキャンディーを舐めながら、私は一人の老人が子どもたちと遊んでいるのに目をやった。
子どもたちは老人の連れという感じではない。
どうやら、ターミナルにいる就学前の子どもたちのために、老人がお遊戯係を買って出たらしい。

年齢は七十歳前、恰幅がよく、格子縞のズボンにポロシャツとループタイといった格好で、ふらりふらりと歩いている。
私の陰轡な心境からすれば、子どもを力ートに乗せてなんかいないで、静かに余生のことでも考えてろよ、と言いたいところだった。
しかし、老人は相変わらず子どもたちと一緒になって、カートをあっちへこっちへと押し続けている。

老人と子どもたちのすることなすことに、人々は声をあげて笑った。
老人が笑うと大きな口が開いて、歯が丸見えになった。
私は、一人静かにムスッとしていられるように、老人が幼い子どもたちをこの場から連れ出してくれればいいのにと思った。

とうとう、老人は息を切らしてしまった。
そしてどこへ向かったか。
なんとまっすぐ、私のほうへ向かってきたのである。

まるで、その場にいるネコ嫌いの中から、たった二人に狙いを定めたネコのように。
老人は壁にもたれて腰を下ろすと、ハンカチで汗を拭い、あえぎあえぎ言った、「やあ、やあ、こんにちは」それから、私が返事をする前に、知り合ったばかりの小さな友だちのことを話し出した。

あの子は六人兄弟でね、あっちの子は手首を骨折してギブスをしてるんだ、という具合に延々と。
老人がひと呼吸入れ、口を閉ざした。
と思うと、今度はどこが面白いのかさっぱりわからないジョークを、いくつか披露し始めた。いまでも覚えているのが一つだけある。

「布教のために人々の家を訪ねてまわるセブンスデー・アドベンティスト派の人と、そういうことをしないユニテリアン派の人を掛け合わせると、どんな人になると思う?
答えは、理由もないのに人々の家をノックしてまわる人だよ」
それから老人は私に質問し始めた。

妻のこと、娘のこと、住んでいる街のことを、根ほり葉ほり。
仕事のことも聞いてきた。
何を、どこで、どんなふうにしているのか?
私は質問のいくつかには答えたが、いくつかは上手にはぐらかした。しかし老人はうまくはぐらかしきれないほど次から次へと聞いてくる最後にはこう言って私をギクリとさせた