機密費
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著者
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歳川隆雄 | |||||
出版社
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集英社新書/集英社 | |||||
定価
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本体価格 660円+税 | |||||
第一刷発行
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2001/08/22 | |||||
ISBN4−08−720103−1 |
「外務省改革の旗手」が小泉「改革」政権最大のネックに 二〇〇一年四月二十六日、八○%台の驚異的な支持率を背景に小泉純一郎政権がスタートしたとき、「外交の府」としての強烈なエリート意識をもつ外務省は、戦後初めて経験する深刻な状況に置かれていた。 年初に明るみに出た松尾克俊元要人外国訪問支援室長の機密費詐取事件が、「組織ぐるみ」の機密費流用や首相官邸への機密費「上納」などの疑惑に発展。 そんなところへ「外務省改革」の意気込みもすさまじく乗り込んできたのが、小泉政権の最大の「目玉」として入閣した田中真紀子外相である。 外務省改革は初めから彼女の,狙い目」だったのだ。 だが小泉首相としては、抜群の真紀子人気と彼女の怖いもの知らずの”突進力”に賭けたとみるべきだろう。 田中が外相として最初に扱った外交案件は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の最高実力者・金正日総書記の長男・金正男の不法入国(五月一日)問題。 だが就任当初、田中のイニシアチブが”実を結んだ”のはこの金正男の一件ぐらいで、あとは外相の指示や対応がことごとく省内外にゴタゴタを引き起こす。 この人事凍結令は官僚側との緊張をいっぺんに高め、さらに田中が外務省を「伏魔殿」呼ばわりし、川島裕事務次官、飯村豊官房長らを「大臣室出入り禁止」にしたことで外相冊官僚の対立は臨界点を越えた。 その理由を田中は「(官僚側の圧力で)心身ともにパニック状態だった」と説明したが、これで日米間に「真紀子ファクター」が浮上することになった。 それを田中が強引に復職させたのである。 だが、実際にはアラビスト(アラビア語語学研修出身)の上村はヒゲをたくわえており、そんな彼が「顔も見たくない」などと遠ざけられたのが真相である。 そして外相vs.外務官僚のバトルロイヤルは、米国のミサイル防衛計画に関する田中発言をめぐって頂点に達する。 また、昼食会に先立つフィッシャー独外相との会談では、「技術がミサイル防衛に使われることには懸念をもっている。日米安保の下で日本は核の傘に保護されていたが、これはイージー(安易)な方法だった」。 "禁じ手"を使った外務官僚のしっぺ返しだ。 だが、「NMD構想には理解を示す」日本の政府見解と異なった意見が外相発言として世界中に発信されるとなれば、問題は別だ。 そして米ブッシュ政権内にも外相の基本スタンスが「反米親中」ではないか、との見方が広がり、同政権の対日政策の実務責任者であるケリi国務次官補(東アジア・太平洋担当)などは田中の外相としての資質に疑念を呈したほどだ。 こうしたこともあって田中は、六月三十日の日米首脳会談前に何とか米側の「誤解」を解きたいと強く自らの訪米を希望したが、ワシントンは公式には何の反応も示さないというかたちで「真紀子ファクター」への意思表示をした。 |
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