文明の衝突
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著者
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サミュエル・ハンチントン (鈴木主税/訳) | |||||
出版社
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集英社 | |||||
定価
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本体価格 2800円+税 | |||||
第一刷発行
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1998/06/30 | |||||
ご注文
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ISBN4−08−773292−4 |
日本語版への序文 サミュエル・P・バンチントン 一九九三年七月号の『フォーリン・アフェアーズ』誌に掲載された私の論文「文明の衝突?」は、世界中の多くの国で論議の的となり、論争を引き起こした。 文明の衝突という私のテーゼにたいする論評の多くは、批判的なものだった。 世界の多くの地域で異なった文明に属するグループ間の局地的な激しいフォルト・ライン(断層線)戦争が、ときに休戦で区切られたとはいえ、持続していること。 欧州連合やメルコスール(南米共同市場)のような単一文明圏が、経済的統合に向かって劇的に進歩をとげているのにたいし、APECやNAFTAのような多文明の連合には進歩が見られたいこと。 ヨーロッパおよび北米への非西欧人の移民をめぐって軋轢が増大していること。 ロシアが「プリマコフ・ドクトリン」を採択し、ロシアが西欧諸国のコミュニティに加わる見込みがなくなったこと。 しかし、過去五年のさまざまた事件によって示されているように、それがすぐれた視点をあたえてくれ、世界政治の場における大きな変化を理解しやすくしてくれることはたしかである。 私は少なくとも週に二回ないし二回、そのようなミーティングヘの出席を求められている。 日本を代表してこの会合に出席したのは、小和田恒国連大使と猪口孝教授であった。このような交流によって生まれる建設的な方策が異なった文化をもつ人びとのあいだの理解を高めるのである。 文明の衝突というテーゼは、日本にとって重要な二つの意味がある。第一に、それが日本は独自の文明をもつかどうかという疑間をかきたてたことである。 それに加えて、日本が明らかに前世紀に近代化をとげた一方で、日本の文明と文化は西欧のそれと異なったままである。 そのことによって日本は孤立しており、世界のいかなる他国とも文化的に密接なつながりをもたない。さらに、日本のディアスポラ(移住者集団)はアメリカ、ブラジル、ペルーなどいくつかの国に存在するが、いずれも少数で、移住先の杜会に同化する傾向がある。文化が提携をうながす世界にあって、日本は、現在アメリカとイギリス、フランスとドイツ、ロシアとギリシア、中国とシンガポールのあいだに存在するような、緊密な文化的パートナーシップを結べないのである。 そのために、日本の他国との関係は文化的な紐帯ではなく、安全保障および経済的な利害によって形成されることになる。 そして、もちろん、本書で指摘したように、国際的な存在になって以来、日本は世界の問題に支配的な力をもつと思われる国と手を結ぶのが自国の利益にかなうと考えてきた。 これをうまくやってのけるかどうかが、東アジアと世界の平和を維持するうえで決定的な要因になるだろう。 一九九八年五月
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