カルロス・ゴーンに学ぶ 改革の極意
 
  なぜゴーンは成功出来たのか? 日本の経済と企業を蘇らせるための回答がここにある。日産自動車という一つの企業をスタディ・ケースとして、カルロス・ゴーンの経営の秘密に限りなく迫る ! 改革に取り組む心得、リーダーシップの発揮の仕方、改革に対する基本的考え方と姿勢・戦略のたて方、改革の手順、社員をやる気にさせる手法、「必達目標」の設定の仕方、実行の方法など、カルロス・ゴーンの改革の手法に肉薄し、その極意を明,らかにする。
 
著者
板垣英憲/著
出版社
KKベストセラーズ
定価
本体価格 1400円+税
第一刷発行
2001/10/10
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ISBN4−584−18627−8

はじめに

二〇〇一年六月二十六日午前十時、日産自動車のカルロス・ゴーン社長は塙義一会長とともに首相官邸を表敬訪問し、小泉純一郎首相と懇談した。
ゴーンは、その五日前の二十一日、株主総会後の取締役会でC00(社長兼日取高執行責任者)からCEO(社厚良兼最高経営責任者)に昇格して主導権を握り、名実ともに円産自動車の総帥となって、日崖の顔としてリーダーシップを発揮できる立場を確立したばかりだった。

この表敬訪問には、小泉首相が同月十八日に改装した東京・銀座にある日産の展示場に祝辞を贈ったことに対しての返礼の意味も含まれていたが、それ以上に、「改革に取り組むカルロス・ゴーンさんの意見が聞きたい」と、彼の手腕に典味津々の小泉首相が、その訪問を楽しみにしていたようだった。

カルロス・ゴーンは、一九九九年六月に、フランスの自動車会社ルノーの副社長から日産自動車のCOOに転じ、同年十月に「日産リバイバルプラン(NRP)」を打ち出して、三年計画という期限付きで経営再建に取り紺んできた。

その後、二〇〇〇年六月にはCOOに就任、二〇〇一年六月二十一日の株主総会では、第一段階の「必達目標」である「コスト削減による黒字転換」を同年三月期決算で達成し、「V字回復に成功した」と報告した。

一方の小泉純一郎は、二〇〇一年四月二十六日に首相に就任。
「新世紀維新」実現のため、「聖域なき構造改革」に取り組む「改革断行内閣」を組織し、「恐れず、ひるまず、とらわれず」の姿勢を打ち出してきたが、「痛みを伴う改革」に着手してまだ日が浅かった。

ゴーンの表敬訪問を受けたちょうどその頃、小泉首相の行く手には、改革を阻もうとする「抵抗勢力」が、七月の参議院議員選挙が終わるのを手ぐすね引いて待ち構えており、日本の未来を賭けた「死闘」が始まろうとしていたのである。

「日産リバイバルプランしの進捗は、まだ道半ばとはいえ、小泉首相にとって、「痛みを伴う改革」を断行し、「コスト削減による黒字転換」を達成したカルロス・ゴーンは、「改革の先輩格」と言ってもよく、それだけに握手もそこそこに彼に矢継ぎ早の質問を浴びせた。

小泉首相は、二〇〇一年三月期決算で、予想を上回る利益をあげた日産自動車の再建計画について、「どのように目標を達成したのか?」「目標達成の秘訣は?」「職を失った人たちはどうなったのか?」「社長が一番困難だった時期は?」などと聞いたという。

おそらく抵抗勢力に打ち勝って改革を進める「ヒント」を、彼から得たかったのだろう。
これに対してゴーンは、「努力の期間の後に、必ず成果は目に見える形で出る」「会社の再建は進み、新卒採用も増やしている」などと答えた。

また小泉首相は、近々フランスを訪問する予定を話したほか、日本政府の全公用車を、環境に優しい低公害車に転換する計画への協力も要請した。
ゴーンは、「日産は、超低公害車の開発に全力をあげている。日本政府の目標に合致するよう、低公害車普及にパートナーとして協力したい」と約束し、日産自動車を抜け目なくアピールすることも忘れなかったという。

会談の後、ゴーンは記者団に囲まれて、「首相は先を見通す人で、洞察力に優れ、非常にいい聞き手だ。
とてもオープンで決断力のある人とお見受けした」と、小泉首相の印象を披露している。

 

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