静かに健やかに遠くまで
著者
城山三郎
出版社
海竜社
定価
本体価格 1500円+税
第一刷発行
2002/02/08
ISBN4−7953−07001
すべてのビジネスマンに贈る 生き抜く勇気 耐える力 誇りある人生のために

■目次
第1章 生きてゆく日々;第2章 会社のメカニズム;第3章 男のライフ・スタイル;第4章 サラリーマンの敗者復活戦;第5章 世わたりの秘訣;第6章 家庭の姿かたち;第7章 老後の風景

■要旨
すべてのビジネスマンに贈る生き抜く勇気、耐える力。誇りある人生のために。

 


終わりに

一つの箴言の力

本書のタイトルにした『静かに健やかに遠くまで』は、私の最も好きな次の言葉を縮めたものである。
「静かに行く者は健やかに行く健やかに行く者は遠くまで行く」
いまとなっては、その書名も著者名も思い出せないが、高名の経済学者の業績と人物を紹介した本の中に出てきた言葉で、学生時代の終わりか大学教師になって間もない私が読み、すっかり、その虜になった本の中に出てきた言葉である。
たしか、イタリヤの経済学者パレートについての叙述の中で、彼がモットーとした言葉として紹介されていた。
原語では、
Chi va piano,va sano
Chi va sano,va lontano
それこそローマ字読みで気持よく口ずさむことができ、くり返すうち、意味まで伝わってくる気がしてくるではないか。
もっとも、当時の私の中には、一種の後めたさもあった。
経済学徒として、経済学の業績に感心せず、箴言のようなものに感心している。
それでよいのか、と。
そういえば、私が経済学者ケインズの原著の中で、まず、とらえられたのが、
『伝記論集』
あまりの面白さに、一夏、信州にとじこもって、これを邦訳し、同窓生が編集者をしている出版社に持ちこんだところ、売れそうにない本として、「ノー」
という返事。
ところが、その同じ本が、その出版社から十数年後に、ケインズ通とされる学者の訳書として刊行されることになり、私自身の恩師にはまるで考えられぬことであっただけに、学者世界の歪みをはじめて思い知らされ、さらに経済学から離れ、文学へと傾斜して行くことになった。
私の場合、結果的には一つの箴言が人生のコースを変えさせることになったのである。
そのおかげで、私は悔いのない人生を送ることができた。
箴言には、それほど大きな力がある。
「それに比べて私の書いてきたものなど」と身の縮む思いもするのだが、職業柄、少しは人間通、それに、やや年長の友人のつぶやきぐらいの感じでお読み頂き、ほんの僅かでもお役に立つようなことがあればと、念じている。

平成十三年十二月

城山三郎

(本書あとがきより引用)


 

 

 

 

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