西原理恵子の人生一年生2号 ワンダーライフスペシャル
著者
西原 理恵子
出版社
小学館
定価
本体価格 1300円+税
第一刷発行
2003/04
ISBN 4-09-106072-2
あの西原ムックがまたも登場。ベストセラー企画復活、豪華ゲスト多数、描きおろし漫画500%増、…と、超豪勢企画連発。

海外取材マンガ2連発!!恨ミのベストセラー企画復活!!安野モヨコ、くらたまが描くカヴァーマンガ!!重松清による西原初のロングインタビュー!!しりあがり寿と画力対決!!などなど、あふれんばかりの超ボリューム!!

  「恨ミシュラン」「鳥頭紀行」「まあじゃんほうろうき」などなど、ベストセラーを連発し続けてきた漫画家・西原理恵子。渋谷パルコでの初の展覧会も大盛況、そして映画「ぼくんち」が公開! と近年さらなる盛り上がりを見せています。 本書は、そのサイバラワールドを一冊のムックの中で余すところなく展開する`100%サイバラ雑誌aです。伝説の恨ミシュラン復活!! 海外取材マンガ2連発!! 安野モヨコ、くらたまが描くカヴァーマンガ!! 直木賞作家・重松清による西原初のロングインタビュー!! しりあがり寿と画力対決!!…などなど、すべて新作、描きおろし100ページ超!! ファンならずとも垂涎のボリュームたっぷりの一冊。4月12日映画公開と同日発刊!!


「恨ミシュラン」とは─。
漫画家の西原理恵子とコラムニストの神足裕司が、『週刊朝日』(朝日新聞社刊)に連載(一九九三年から一九九五年)した、有名レストランの辛ロコラム。
高級レストランといえば高けりゃ美味い、伝統と格式がありゃ偉い、とチヤホヤされ、グルメ番組や雑誌にはお高くとまった三ツ星がズラリ。
そんなとき、会社の経費で食っては文句をたれるという、掟破りなグルメ記事「恨ミシュラン」が誕生した。
通称サイバラとコータリンは、三ツ星キラキラな店に出没してはノリノリで食い荒らし、食ったマンマ、見たマンマを皮肉たっぷりに書きまくった。
それがウケにウケ、読者のハートを掴んで人気爆発。
日本中の高級店は戦々恐々、美食家は自分のコメントに真っ青、セレブレティたちはうっかりご用達の店にもできず大騒ぎ。
「恨ミシュラン」により、敷居の高い店が一夜にしてフツーかフツー以下に落ちるのだから、ホントに恨めしかったのは店側だったのかも。
大騒ぎの理由はレストランの実名掲載。
内容によっては店から抗議はガンガンくるわ、でも、その抗議文もちゃっかり掲載するわで、店側と編集部は毎週ガチンコ状態。
しかし、世間は、気取った店がトホホな店の烙印を押される様子を気持ちよーく楽しんでいた。
一方、サイバラとコータリンは、相も変わらず攻撃の手を緩めることなく食っては書きつづけていた。
そんなこんなで叩かれもしたが、庶民の圧倒的支持のなか、晴れて、「恨ミシュラン」は単行本となりベストセラー。
今では、伝説のグル本と崇められているほどだ。
今回、満を持して復活する恨ミシュラン。
二人の刃の切れ味たるや如何に!?そして、果たして如何なる波紋をもたらすのか!?
湯木貞一は偉い奴だ。
『暮らしの手帖』の花森安治が書いている。
「すし、天ぷら、うなぎ、どじょう、すっぽんなど、専門の店には、それぞれ見事な店もあるとして、日本料理全体を通して、ぼくは、〈吉兆〉を天下第一等の店というのです」
(『吉兆味ばなし』より)
マラソンや砲丸投げだけではない。
吉兆は十種競技のチャンピオンだと言っている。
湯木貞一は創業者だ。
大阪・新地の間口一間からはじめて五十年で日本一にした。
発明家だった。
キャビアやフォアグラを日本料理に使った。
松花堂弁当は湯木が石清水八幡の煙草盆に料理を盛ったことからはじまった。
が、それだけだったらソニーを創業した森田、井深ほどのものだ。
『味ばなし』に"包丁かげん"がある。
家 庭のおかずは子供中心でなくお年寄りを考えろ。
かまぼこひとつも包丁で変わる、と言う。
バリアフリー思想がある。
大徳寺で出された大根の油焼きに感激する。
裏の畑から抜いた大根を鉄鍋で焼き、昆布で味を付けただけ。
ミニマリズムだ。乗鞍岳みつけた火山灰のコンロに網をかけ、卓上で焼きながら食べられるようにした。
今や日本中の温泉宿で、しょうもない紙鍋になっている。
熱き前衛の道場六三郎も、フレンチを和食化するシェフたちも、みな湯木の子供たちであろう。
と上げておいて、吉兆は東京では評判が悪い。
ホテル西洋銀座店を訪ねるのは、フェアじゃないかもしれない。
このバブルホテルは開業当時、田中康夫、今や長野県知事がクサしたのがちっとも治っていない。
地下へ降りたエレベーター前の白いソファに、白い星形のクッションが置いてある。
まだ、ビリーバンバンに取り愚かれているのだ。
そんなファンシーな場所で京都の伝統を語り、度胸よく四万五千円のコースを出す。
四万五千円だ。
こめかみに圧迫感を感じないだろうか。
鳩尾に泡立つものは?厚い財布を広げた土建屋のオヤジにソープヘ誘われたような。
料理も純金風呂だった。
人気のない店内に、ただ一組別な客の土地売買と金のブレスレット音が寂しく響く中、運ばれてきた一号皿は松葉蟹丸々一杯だった。
キャビアが添えてある。料理は簡素に(?)。
湯木翁の教えを守ったつもりだろうか。
二号皿は茶色い土鍋。和民チェーンの茶碗くらいの鍋じゃない。
正真正銘の土鍋だ。
ふたを取ると、透明な湯に幼児の拳大の黒い塊。

(本文P.24〜27 より引用)


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