ゴンタクレが行く
著者
大杉漣/著
出版社
有線ブロードネットワークス
定価
本体価格 1800円+税
第一刷発行
2003/11    ISBN 4-401-72100-4
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「音楽と人」の連載「ゴンタクレが行く」「ハモニカの味」に加筆・訂正を加え、インタビューや特別対談も入った単行本。知られざるゴンタクレ(悪ガキ)ぶりがよく分かる。
 

撮影現場でのエピソード、サッカーへの情熱、フォークとの出逢い、そして家族のこと・・・・・。雑誌「音楽と人」に連載中の「ゴンタクレが行く」を一冊にまとめた自伝的エッセイ集。テレビやスクリーンだけでは窺い知れない「あるがまま」の不良少年の姿がここにあります。
[特別対談]山崎まさよし×大杉 漣 [特別寄稿(本人書き下ろし)]故郷徳島ライヴ・ルポ



2003/11/03(月) BOOKSルーエの店頭にてサイン会を行いました。

◇サイン会のご報告
 小雨が降る中、FANの熱気で大変盛り上がりました。
 
当日のサイン会の様子⇒⇒⇒⇒


スリムな漣さん

ぼくは痩せた!
それは体調が悪いからではなく、意識的に痩せたのだ。
「大杉さんは、演じる時〈役づくり〉はどうされるんですか?」
よく訊かれる質問だ。
ウーン、役づくりか。
難しいよね。
正直どう答えていいのかわからないし、人に話すべきことでもないような気もしている。
かと言って「出たとこ勝負の行き当たりばったりなんですよ」と少々ひねった言い切り方も不親切かつ誤解をまねく怖れがある。
まあ、人様に〈努力〉を情報開示するのが恥ずかしいだけなのだ。
「ぼく、この役を演ずるにあたり、こんなに〈役づくり〉を一生懸命やりました」
なんて……イヤイヤとてもとても言えるもんじゃない。
だがしかし、忘れもしない二〇〇一年十二月末日。磯村一路監督の新作映画『船を降りたら彼女の島』の打ち合わせでのこと。
「痩せましょう、漣さん」
「えっ、痩せるんですか?」
「ええ、今回のこの役は、今の漣さんより痩せていたほうが……ぼくは、〈スリムな漣さん〉を見たい!」
監督に「見たい!」と言われれば、それをお見せするのが、ぼくの仕事なのだが……。
「スリムなぼくですか?」
「ええ、私自身もやってみたんです。是非、これを機会に痩せてください」
「わ、わかりました。やってみますね……」
これまで何π本の映画に出演させていただいたが、「痩せて」という明確な要求を出されたのは初めての経験だった。
つまり、誰が見てもわかる〈役づくり〉として、クランクイン(撮影に入ること)までにその答えを出さなくてはならないのだ。
ウーン……。
その時節、忘年会、正月、新年会、サッカークラブの飲み会など……ぼくは、友人共から〈付きあいの悪い男〉として、おせち料理なにするものゾォーとばかりに、ぼく自身を飼育したのだった。
結果、六キロの減量。
そして、クランクイン・愛媛県大三島。
「いやあ、漣さん痩せましたね。ウーン、いいですよ。ちょっぴり神経質そうに見えるし、これで髪に白を人れたら久単了(木付佳乃さん)の父親ですよ」
磯村監督が笑った。そして、すっかり草食系動物と化したスリムな漣さんも笑った。
ロケーションで出るお弁当の油モノには自然と手をつけず、間食(特にお菓子)もしなくなった。
今、愛媛児で野菜畑をノンオイルドレッシング片手に走り山す俳優がいたら、それは間違いなく〈スリムな漣さん〉なのだ。
後口、東京に戻り四月から入る映画の打ち合わせに行く。
「あれ、漣さん痩せました」
「(微笑みながら)あれ、わかりますう!?」
「わかりますよ、でも今度は時代劇で着物だし……太りましょう!」
困ったものだ。
ハリウッドではない日本映画の現場が、ここにある。

(本文P.10〜12 より引用)
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