中国マフィアの過去、現在。
黒い龍たちの興亡史。
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黒社会の起源「幇会」
黒社会と総称されている中国系マフィアの起源は、明末清初に現れた「幇会（秘密結社）」であると言われている。
古代より、中国では、一種の同業組合的な民間組織が、自然発生的に各地域で誕生してきた。
たとえば、船を使った運輸業者たちは、蘇川幇、揚州幇、上江幇、江西幇などと呼ばれる結社を、両替商を営んでいた者たちは、山西封幇、安徽幇、四川幕などの団体を組織していた（「幇」という言葉は、中国語でグループ、仲間といった意味合いを持っている）。
月日のたつうちに、こうした民間結社の多くは、内部の機関を整え、活動のための資金も充実させていくなど次第にその規模を拡大していき、また、構成員の資格も同業者に限ることをやめ、その数を増やしていった。
さらに、１７世紀中頃に、明朝が倒れ、新たに満州族を主体とした清朝が起こると、異民族支配に反感を抱く勢力が、これらの結社の中から現れ始める。
彼らは「反清復明」のスローガンの元に、広く民衆を糾合し、清朝政府に対し組織的な抵抗を続けた。
これが、幇会である。
幇会は、清朝末期になると、孫文率いる革命グループと結びつき、１９１１年に起こった辛亥革命の成功に大きな役割を果たすこととなる。
さらに、中華民国成立から、衰世凱の独裁、軍閥の割拠、北伐の完了に至る動乱の時代の中で、時の権力者と結託しながら、その力をますます強化していった。
そして、１９２０年代から３０年代にかけて、帯会は最盛期を迎えることとなる。

２　反清活動を繰り広げた洪門

数ある封巾会の中で、最も民族主義的な色彩が強く、後の黒社会の成立にも大きな影響を与えたのが、洪門である。
現在、台湾、香港などを活動拠点としている黒社会組織の多くは、何らかの形で洪門の伝統的儀式や規則、暗号などを取り入れている。
伝承によれば、洪門の始祖とされている洪英は、山西省平陽府太平県の出身で、直隷大同鎮守、姜騒の幕僚として、軍務に参画していた。
洪英は、大変な切れ者で、しかも正義感溢れる好漢だったために、多くの侠客たちに慕われ、彼の門人となる者は跡を絶たなかった。
１６４１年、すでに中国への侵入を開始していた清軍の南下を受けて、洪英とその一門は、揚州を拠点に抗戦を続けていた明朝の臣、史可法のもとに身を寄せた。その後、史可法が殉難したため、洪英らは、安徽省莞湖に移り、同地で清兵と戦っていた将軍、黄得功の軍隊に加わった。
ほどなくして、決戦に敗れた黄得功は自刃、洪は黄将軍の残兵２万余人を集めて、清に対する抵抗を続けたが、１６４５年、莞湖付近の三盆河で戦死した。
洪英の死後、その門人たちは、福建省で反清の兵を率いていた将軍、鄭成功のもとに向かい、１６６１年、ともに台湾へ渡った。鄭成功は、台湾を支配下におさめると、洪英門下の察徳忠、方大洪、馬超興、胡徳帝、李式開の５人を、福建省甫田県の九連山少林寺に派遣した。九連山少林寺には、平素より武術の訓練に励む僧たちが、兵乱の際、天下に平穏を回復するため朝廷を支援する伝統があった。
鄭成功は、少林寺の協力のもと、僧侶に扮した察徳忠らに、そこをアジトとして反清工作を展開させることを企図したのである。