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 ムーバスの思想武蔵野市の実践
著者
土屋正忠/著
出版社
東洋経済新報社
定価
税込価格 1500円
第一刷発行
2004/08
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ISBN 4-492-22252-9
 
ムーバス、セカンドスクール、0123、生活安全条例…時代が求める政策を次々とヒットさせる武蔵野市そのトップリーダーが実践を語る。
 

本の要約

[目次]
序章 新しい“公共”のあり方とは;第1章 地域の安全は市民みずからが守る;第2章 ムーバスの思想・武蔵野市の実践;第3章 セカンドスクール・救国の教育;第4章 美しい日本をつくる;終章 豊かな地域社会―市町村の時代


土屋正忠/著   つちや・まさただ

●1942年生まれ。武蔵野市に育ち早稲田大学卒業後、市職員9年、市議8年を経て83年41歳で武蔵野市長となる。以来6期22年にわたって地方自治の現場から実践を通して強力なメッセージを全国に発信している。地方行政改革の先駆けとなった市職員高額退職金是正問題、環境浄化条例、難航した吉祥寺駅前広場を土地収用法の適用により4年で完成、子育て支援施設0123、ムーバス、自然体験学習セカンドスクール、介護保険改革、都に先駆けた生活安全条例等、政治と政策と経営の3つができる真の意味の本格派政治家。全国若手市長の目標となっている。座右の銘は「敬天愛人」(西郷隆盛〉と「為政清明」(大久保利通)。


オススメな本 内容抜粋

ムーバス、武蔵野市で一九九五(平成七)年−月にスタートした全国で初めての新公共交通システム、元祖コミュニティバスである。九年目を迎えた今日では四路線一日五〇〇〇人が利用する大ネットワークに発展し、二〇〇四(平成→六)年七月には延べ利用客が一〇〇〇万人を突破する勢いである。
陸上の公共交通の体系は、中長距離が電車などの軌道系、近距離が大型路線バス、そして個別輸送のタクシーと三つで成り立っているが、二〜三キロメートルのコミュニティ内をネットワークするシステムが欠けていた。元祖コミュニティバス・ムーバスは、タクシーは高いし手間もかかる、さりとて歩くには遠すぎるという、潜在的な二ーズを掘り起こした新しい市民交通システムである。
このコミュニティバスの計画に参画された交通評論家の岡並木先生は、「新交通システムと言うと、すぐにコンピユータで制御されたモノレールなどをイメージするが、それらは膨大な投資を必要とし、限られた条件の中でしか実現できないものだ。ムーバスのような市民生活に密着した普遍性のあるシステムが、真の意味の新交通システムなのだ」と評した。武蔵野市で第一号が走ってから九年を経て、現在では既存路線廃止の代替バスも含め、全国の六〇〇以上の自治体でコミュニティバスが運行されている。
このように、ムーバスは市民の足として定着したのだが、二ーズの発見から調査、研究、準備、実施、評価までのプロセスで、さまざまな成果を上げ、新しい”公共”のあり方を指し示すことになった。
第一に、二ーズの発見が市民の提案だったことである。一九九〇(平成二)年に足の不自由な高齢の女性から私宛に【街に出たい」という要望が寄せられたことがきっかけだった。市域が狭く人口過密の武蔵野市でも、移動困難な市民にとっては、じつは交通過疎の不便な地域があるという現実を思い知ったのである。
第二に、バス事業は運輸省(現国土交通省)の認可を受けなければならない。中央官庁の壁をどう越えたか、中央省庁と自治体がどう協力したか、というモデルとなった。
第三は、市が企画・路線開発し、民間バス会社が運行するという、公・民の役割分担、協力のあり方を提示したことである。
第四は、ムーバスが単なる公共交通の創設にとどまらず、高齢者・障害者・妊産婦など の福祉対策、路線から違法駐車が一掃されるなどの交通安全対策、運転手に中高年を採用した雇用対策、マイカーからの乗換えや排ガス浄化装置の装着などの環境対策や商業活性化対策、車内に顔見知りのコミュニティができるなど、じつに多面的な政策効果を生み出したのである。まさにソーシャルポリシーミックスの典型となったことである。
ムーバスは、新しい交通システムだけでなく”公共“のあり方と自治体の役割、バスの可能性を新しく切り開いた。私はこれらを総合して「ムーバスの思想」と呼びたい。そしてこれから新しい時代にすべての領域でこの方式を生かしていきたい(このムーバスについては、第2章で記述している)。
地域社会はさまざまな課題に直面しているが、最大の課題は、ω市民社会の安全、治安、図高齢者が尊厳を持って生きる、E子育て、教育など次世代の育成、の三点であろう。
この本の第−章では、武蔵野市の治安、市民の安全について取り上げた。従来、防災は市役所の仕事だが、治安・防犯は警察行政であり都道府県の仕事であると考えられてきた。
しかし、池田小学校事件をはじめ、頻発する青少年の事件を見ると、とうてい警察だけでは防ぐことができないことは明らかだ。
もちろん警察が治安の中心だが、防犯という観点では市が前面に出て学校教育の現場や地域コミュニティと協力して、総合行政力を発揮しなければならない。さらに一歩進んで市民みずからが自衛しなければ、犯罪の抑止につながらない。
武蔵野市は二〇〇二(平成一四)年一〇月に武蔵野市生活安全条例を施行し、学校の安全対策や独自の安全パトロール、駅頭でのつきまとい勧誘防止などを実践し、効果を上げている。
このような社会秩序維持のための行政に積極的に市が取り組めるのも、先行するさまざまな事例と成果があるためである。一九八三(昭和五八)年、全国に先駆けて主に風俗産業を対象とした環境浄化に関する条例、旅館・レンタルルーム規制条例を制定、また、一九九〇(平成二)年には違法駐車防止条例をつくり、警察と連携して社会秩序や交通秩序
を整えてきたのである。そのポイントは住民運動との連携である。
第2章では、前述のムーバスに加えて、質の高い高齢者サービス「テンミリオンハウス」や「レモンキャブ」、地域の五大学の協力を得て、各大学に市民が自由に学べる生涯学習システム「武蔵野地域自由大学」などについて記述した。
第3章では、最重要な政策課題である子育て・教育について、セカンドスクールなどの実践の記録を紹介した。
現代の日本の青少年に共通する問題は、学ぶことと生きる意欲の欠如である。某予備校のスローガンに〜学力より気力」という言葉があった。まさに正鵠を射ている。学力の前に気力不足が問題だ。その根底には、生まれてからずっとエアコンの効いた快適空間に育ち、食事は過剰、テレビやIT漬け、生きる力のリアリティを感じられない現代の豊かな生活がある。
飛び出せ教室、自然の中へ旦本物の生きる手ごたえを味わおう。武蔵野市のセカンドスクールは自然の中の学校、長期総合体験学習の実践であり、救国の教育である。
セカンドスクールで子どもたちは何を感じどう変わったか、これからの教育はどうあるべきか、二〇〇四(平成一六)年度文部科学省の予算で、連泊五日以上の学校の自然体験教育が組まれ国の制度に取り入れられたが、そのプロセスは?少子化の原点、男女共同参画社会と本音の子育て支援は?など、究極の日本の構造改革について述べた。
第4章では、日本が統一国家としてバランスの取れた発展をしていくために、都市と地方・農山漁村との関係のあり方を間題提起した。
道路特定財源や地方交付税、補助金などの配分をめぐって都市と地方・農山漁村との対立が目立ってきた。各々の地域を代表する国会議員も、選出基盤によって、もっと資金を都市へ、否、農山漁村へ、と主張する。七〇〇兆円を超える国・地方の借金、いままでの方式が立ち行かないことは明白だ。ではどうしたらよいのか。明快な答えは誰も持ち合わせていない。
私は都市にある自治体の長として、都市と農山漁村は対立から協力へ、各々持てるものを生かし相補い、地域の特色を生かして国づくりをしていくべきだと考え、武蔵野市の交流事業を中心に第4章を組み立てた。
私がこの本で書きたかったことは、武蔵野市長としての二一年の経験を通じ、いま日本の社会がいちばん必要としている重要課題を自治体現場の実践を通じて、国民の皆様に呼びかけることである。そして、新しい国の政策や制度を創設し、新時代の豊かな活力に満ちた社会をつくっていきたい。
多くの読者の皆様に、ご意見・ご叱声賜ることを期待している。

 

(本文P. 2〜7より引用)


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