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 アフターダーク
著者
村上春樹/著
出版社
講談社
定価
税込価格 1470円
第一刷発行
2004/09
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ISBN 4-06-212536-6
 
真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。「風の歌を聴け」から25年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹。
 
アフターダーク 村上春樹/著

本の要約

真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。「風の歌を聴け」から25年、さらに新しい小説世界に向かう村上春樹書下ろし長編小説!――マリはカウンターに置いてあった店の紙マッチを手に取り、ジャンパーのポケットに入れる。そしてスツールから降りる。溝をトレースするレコード針。気怠く、官能的なエリントンの音楽。真夜中の音楽だ。(本文より)



オススメな本 内容抜粋

回収する。身体は脈拍のリズムにあわせて、いたるところで点滅し、発熱し、うごめいている。
時刻は真夜中に近く、活動のピークはさすがに越えてしまったものの、生命を維持するための基礎代謝はおとろえることなく続いている。
都市の発するうなりは、通奏低音としてそこにある。
起伏のない、単調な、しかし予感をはらんだうなりだ。
私たちの視線は、とりわけ光の集中した一角を選び、焦点をあわせる。
そのポイントに向けて静かに降下していく。
色とりどりのネオンの海だ。繁華街と呼ばれる地域。ビルの壁面に取り付けられたいくつもの巨大なディジタル・スクリーンは真夜中を境に沈黙に入るが、店頭のスピーカーはまだヒップホップ・ミュージックの誇張された低音をひるむことなくたたき出している。若者たちで混み合った大きなゲームセンター。派手な電子音。
コンパ帰りらしい大学生のグループ。
髪を明るい金髪に染め、ミニスカートの下から、健康な両脚をむき出しにした十代の女の子たち。最終電車に乗り遅れないように、急ぎ足でスクランブル交差点を渡っていくサラリーマン。
しかしこの時刻になっても、カラオケ店の呼び込みは相変らずにぎやかに続いている。派手な外装を施した黒のワゴン車が、街の品定めをするようにゆっくりと通りを流している。
真っ黒なフィルムが貼られた窓ガラス。それは深海に生息する、特別な皮膚と器官をもった生き物を思わせる。二人組の若い警官が緊張した面持ちで同じ通りをパトロールしているが、彼らに注意を払うものはほとんどいない。
この時刻の街は、街そのものの原理に従って機能している。季節は秋の終わり。風はないが、空気は冷ややかだ。
あとほんの少しで日付が変わろうとしている。

 

(本文P. 3〜5より引用)


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