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 問題な日本語 どこがおかしい?何がおかしい?
著者
北原保雄 /編
出版社
大修館書店
定価
税込価格 840円
第一刷発行
2004/12
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ISBN 4-469-22168-6
 
単に「使ってはいけない」「この用法は間違っている」と指摘するだけではなく、どうしてそういう表現が生まれてくるのか、誤用であったとしても、その誤用が生まれてくる「誤用の論理」は何なのかを究明する。
 
問題な日本語 どこがおかしい?何がおかしい? 北原保雄 /編

本の要約
これまでの日本語本とはわけが違う。日本語の達人、『明鏡国語辞典』編者・編集委員が総力を挙げて今どきの日本語を解き明かす。

へんな日本語にも理由がある!「おビールをお持ちしました」「全然いい」「よろしかったでしょうか」「っていうか」「知らなさそうだ」「やむおえない」「私って・・・じゃないですか」「みたいな」「理由は特にないです」「なにげに」「これってどうよ」「耳ざわりのよい音楽」「わたし的にはOKです」・・・日本語ブームの昨今、なんだか気になる日本語も増えている。本書は、単に「使ってはいけない」「この用法は間違っている」と指摘するだけの本ではありません。どうしてそういう表現が生まれてくるのか、誤用であったとしても、その誤用が生まれてくるいわば「誤用の論理」は何なのかを究明するものです。

[目次]
おビールをお持ちしました;全然いい;こちら〜になります;よろしかったでしょうか;っていうか;すごいおいしい;知らなさそうだ;コーヒーのほうをお持ちしました;やむおえない;私って…じゃないですか〔ほか〕


本書「まえがき」より
一昨年、現代の日本語についていろいろな面から深く解説した『明鏡国語辞典』を刊行した。それを記念して、全国の高等学校の国語科の先生方に「気になる日本語」を指摘していただき、それらの用法について解説するという試みを行ったところ、大変な好評をいただいた。そこで今回、より具体的な情報なども加えて書き改め、一冊の本として刊行することとした。日本語ブームといわれ、日本語に関する本が数多く出版されているが、本書は、単に「使ってはいけない」「この用法は間違っている」と指摘するだけの本ではない。どうしてそういう表現が生まれてくるのか、誤用であったとしても、その誤用が生まれてくるいわば「誤用の論理」は何なのかを究明している。表題とした「問題な」も味な使い方だと思うが、問題のある表現である。本書が、「問題の日本語」について疑問を持ち考えるときの一助になれば幸いである。二〇〇四年十二月 『明鏡国語辞典』編者 北原保雄



オススメな本 内容抜粋

おビールをお持ちしました


[質問]「おビールをお持ちしました」と言うと違和感を感じますが、これは正しい表現でしょうか。

[答え]この表現のどの部分に違和感を感じられるのか分かりませんが、間題点は二つあると思います。「おビール」と「お持ちする」の部分です。
まず第一点の「おビール」ですが、現在では一部に使う人もいますので、違和感を感じないという人も意外に多いかもしれません。
しかし「(先生の)おカバンをお持ちします」の場合、「おカバン」は先生の持ち物で、先生を高めるために「お」を付けているのですが、「ビール」は誰の持ち物でもなく、極端に言えば、運んできた自分の物で、尊敬すべき相手がありません。
この場合、「ビール」に「お」を付けるのは言葉を上品に美しくするためで、「おビール」のような語を美化語と呼びます。
「おガバン」も前掲のように相手を高めるために使った場合には尊敬語ですが、「私はおカバンを買いました」のように、自分の物についていった場合には美化語になります。
美化語は、上品な物言いをして自分の品位を高めるための表現ですから、使うか使わないかには大きな個人差があります。
「お天気・お茶・お釣り・お寺」などは多くの人が普通に使うのではないでしょうか。
「お金・お米・お味・お刺身・お煎餅・お水・お花」などでは「お」を付けないという人が多くなってくると思われます。
「お醤油・おソース・お箸・お大根・お財布・お洋服・おカバン」などになると、男性はあまり使わないのではないでしょうか。
さて問題の「おビール」ですが、これは飲食店などで使われ始めその世界ではすでに定着しているようですが、広く一般化しているとは言えないでしょう。
「おジュース」よりはまだましですが、違和感を感じる人が多いのではないでしょうか。
美化語は、自分が上品だということを示すための表現ですから、一般化していないものほど使用効果が高いと言えますが、それだけにあまり使いすぎるとかえって品位を失うことになります。
不足すると乱暴な言葉遣いになりますし、過剰になると蟹歴を買うことになります。
次に、第二点の「お持ちする」についてですが、「持つ」は自分の行為だから「お」を付けるのはおかしいと感じる人がいるかもしれません。
さりとて、相手を高めているのですから、美化語とは考えられません。
多くの人は、「お〜する」は全体で謙譲語だから問題ないと考え、違和感を持っていないのですから、ことさら問題を提起することはないのですが、金田一京助博士は「お〜する」を謙譲に使うのは間違いだと書いていますから、大正の頃は正しくない表現だと考えられていたようです。
現在では、「(先生を)お誘いする」「(先生のために)お調べする」などは最も普通の謙譲表現ですが、以前は不自然だと感じられていたのです。
現在ではさらに、「(私は会社を)お休みします」のように行為が相手に及ばず謙譲にはならない「お〜する」も使われますが、美化語としか言いようがありません。
年配の人には違和感を強く訴える人がいますが、若い女性などには広く使われているのではないでしょうか。こう見ると、「お〜する」は、謙譲の使い方も認められない時期から、それの認められる時期、そして美化語としても使われる時期と、三回も変化していることになります。
美化語的な「お〜する」も、やがては違和感なく認められる日がくることでしょう。

(北原保雄)

 

(本文P. 12〜15より引用)



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