BOOKSルーエのおすすめ本 画像
 ホルモー六景
著者
万城目学/著
出版社
角川書店
定価
税込価格 1,365円
第一刷発行
2007/11
e−honでご注文
ISBN 978-4-04-873814-9

 ★ 会員登録はこちら(1500円以上で宅配送料無料)⇒
 
大ヒット不思議青春グラフィティ、今度のテーマは「恋」だ!!不可視の「オニ」を使役し、各大学の覇権をかけて争う、それが「ホルモー」だ!!この奇妙な部活動に巻き込まれた少年少女の戦いと恋を描く、無類に楽しい青春文学!!
 
ホルモー六景 万城目学/著

本の要約

このごろ都にはやるもの、恋文、凡ちゃん、二人静。四神見える学舎の、威信を賭けます若人ら、負けて雄叫びなるものかと、今日も京にて狂になり、励むは御存知、是れ「ホルモー」。負けたら御存知、其れ「ホルモー」。このごろ都にはやるもの。元カレ、合コン、古長持。祗園祭の宵山に、浴衣で駆けます若人ら、オニと戯れ空騒ぎ、友と戯れ阿呆踊り。四神見える王城の地に、今宵も干戈の響きあり。挑むは御存知、是れ「ホルモー」。負けたら御存知、其れ「ホルモー」。古今東西入り乱れ、神出鬼没の法螺試合、若者たちは恋謳い、魑魅魍魎は天翔る。京都の街に咲き誇る、百花繚乱恋模様。都大路に鳴り渡る、伝説復古の大号令。変幻自在の第二幕、その名も堂々「ホルモー六景」、ここに推参。



オススメな本 内容抜粋

プロローグ
湯気に煽られ、かつお節が踊るきしめんと、ライス小。
いつものメニューをトレーにのせ、窓際の席に腰を下ろすと、目の前にはネギトロ丼にヨーグ
ルト、黄金色の大学イモという豪勢極まりないメニューが並んでいた。
「ずいぶんリッチですな、高村くん」
正面の席に座る色白で小作りな顔をした男は、「祭りですから」とよくわからぬ受け答えとと
もに、
「大学イモ、一つあげるよ」
と小鉢を箸の先で示した。
「イモよりも、俺はネギトロ丼のネギトロが欲しい」
「嫌だよ」
にべもない返事を寄越して、高村はわさびを溶いた小皿の醤油を几帳面に丼全体にまぶし、
「いただきます」と手を合わせた。
「昨日、実家の母親から電話がかかってきた」
「おお、御母堂さまはお元気か?この前、お裾分けしてもらった錦松梅、たいへんおいしゅう
ございました、とお伝えください」
お裾分けした覚えなんかない。安倍が勝手に段ボールから持っていったんだろ、という棘のあ
る言葉に、そうだったかな?と俺はきしめんをふうふうしてすする。
「ねえi安倍は大学でどんなサークル活動をしているのか訊ねられたとき、どう答えてる?」
「何だよ、藪から棒に」
「昨日の電話の用件がそれだったんだ。やけにしつこく、僕が大学で何のサークルに入っている
か訊いてくるんだよね。どうも新聞で、大学キャンパスに潜伏する、あやしい宗教サ〜クルにつ
いての記事を読んで、急に心配になったらしい」
「なるほど。で、どう答えたんだ?」
「そんなの母さんには関係ない、って教えなかった。誰が京大青竜会というところで、ホルモー
やってます、なんて言える?」
「わかってないなあ、お前」
幅広麺をつるると吸いこみ、俺はおもむろに手にした器を置いた。何がだよ、とむっとした表
情で、高村もネギトロ丼をかきこむ箸の動きを止める。
「いいか。実家の御母堂が求めているのは、真実じゃない。安心だ。勉学以外のことには一切興
味がないから、サークル活動はしていませんとか、入っているにしても地域のじいさま方とゲー
トボールに勤しんでいますとか、いっそのこと部屋で鉄道模型作りに没頭していて、一週間誰と
も会うことがないからご安心くださいとか何とでも言えるだろう。わかるだろ?」
実に的確に要点を把握した回答にもかかわらず、高村の表情はどこまでも鈍い。それどころか、
あからさまに軽蔑の表情を浮かべ、俺を見返してくる。
「僕は親にそういうウソはつきたくないんだよね」
いかにも殊勝な顔つきで、高村は首を振った。
「きれいごとだね、そんなの」
俺は即座に反論した。
「現実から目をそらすな、高村。俺たちはもう、どっぷり浸かってしまっているんだ。ホルモー
の魔窟に囚われの身になり、はや三年目。新入生をたぶらかして、次代の犠牲者を仕立て上げる
ことに、もう何の躊躇いも感じぬほどだ。オニの連中を見ても、悲しいほど何も思わない。あん
なこの世のものではない連中が、足元で整列していても、平気でメシが食える。我がもの顔で台
所を疾走する、長い触覚の黒い昆虫に悲鳴を上げている自分が、ときどき滑稽に思えることがあ
る。どう考えたって、オニのほうがデインジャラスな存在だからだ」
さすがに今度は異論の余地も見つからないのか、高村は眉間に搬を寄せたまま、ネギトロ丼に
向かい合っている。しかし、丼の残りをかきこむと、
「でも何とか、うまく説明することはできないかな?」
と往生際悪く、言葉を繰り出した。


(本文P. 5〜7より引用)

 

▼この本の感想はこちらへどうぞ。 <別ページでご覧になれます



e−honでご注文
BOOKSルーエ TOPへリンク
 ★ 会員登録はこちら(1500円以上で宅配送料無料)⇒


このページの画像、引用は出版社、または著者のご了解を得ています.

当サイトが引用している著作物に対する著作権は、その製(創)作者・出版社に帰属します。
無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。

Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved.