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 鹿男あをによし 
著者
万城目学/著
出版社
幻冬舎
定価
税込価格 1,575円
第一刷発行
2007/04
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ISBN 978-4-344-01314-8

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ドラマ化決定! 出演:玉木宏 綾瀬はるか 他 / 2008年1月フジテレビにて放送スタート(毎週木曜 夜10時)
 
鹿男あをによし 万城目学/著

本の要約

神経衰弱と断じられ、大学の研究室を追われた28歳の「おれ」は、失意のままに教授の勧めに従って奈良の女子校に赴任する。慣れない土地柄、生意気な女子高生、得体の知れない同僚、さらに鹿・・・・・。そう、鹿がとんでもないことをしてくれたおかげで「おれ」の奈良ライフは気も狂わんばかりに波瀾に満ちた日々になってしまった!「鴨川ホルモー」で衝撃デビューの超新星が放つ、渾身の書き下ろし長編小説。



オススメな本 内容抜粋

はじめに

ずいぶん、おさない頃の話だ。
ベッドに入ってうとうとし始めると、頭の上らへんを、ときどき小人の鼓笛隊が通っていっ
た。おれは目を閉じている。だから、その姿は見えない。ただ、「しゃんしゃかしゃんしゃか」
と音を立てて何かが通っていくのを、夢とうつつの間で聞いている。どうして、見えもしない
のにそれが小人だとわかるのかと訊ねられても、上手には答えられない。夜中に「しゃんしゃ
かしゃんしゃか」と風のような音を立てて通るような連中は、小人の鼓笛隊に決まっている、
と子供のおれは考えたのだ。
だが、そのうちおれも知恵がつく。小学校にも上がる。小人が枕元をうろうろしているとい
つまでも思わない。ある夜のこと、例のごとく、頭の上を小人が通っているとき、おれは初め
て夢の世界に落ちることなく、「起きろ」と自分に命令することができた。ゆっくりと、おれ
はまぶたを開けた。
枕に接するように、ベッドのヘッドボードが立っている。板の厚みはニセンチほど。その厚
みを鼓笛隊の連中が一列になって渡っているとおれは勝手に想像を働かせていた。おれは素早
く身体を起こし、小人たちの姿を捉えようとした。
もちろんーそこには一匹の小人の影も見当たらなかった。
その夜を最後に、おれは二度と「しゃんしゃかしゃんしゃか」を聞くことはなかった。馬鹿
なことをしてしまったと思った。無性に残念でならなかった。このことを父に話したら、案の
定、腺病質なやつだとさんざん馬鹿にされた。次に母に話したら、母はウンウンと大げさにう
なずいてから、「それはお前が大人になったからだ」とよくわからない説明をしてくれた。大
人になったも何も、おれはまだ自分の名前すらまともに漢字で書けない七歳の餓鬼坊主だった
のに。ついでに母は「純な心を持っている証拠だ」と無理矢理おれを褒めてくれた。そんな心
を持っているやつは、あそこで起きたりはしないと思ったが、面倒なので黙っておいた。
おれの二十八年の人生のうちで、不思議な出来事といったらこれくらいのものだ。それから
先、おれは不思議な体験というものを一度も味わったことがない。


(本文P. 5〜7より引用)

 

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