BOOKSルーエのおすすめ本 画像 ★ 会員登録はこちら⇒ 
(1500円以上で宅配送料無料)

 ほかに誰がいる 幻冬舎文庫 あ−29−1
 
朝倉かすみ/〔著〕 出版社:幻冬舎 定価(税込):600円  
第一刷発行:2008年2月 ISBN:978-4-344-41077-0  
e−honでご注文
 
「十六歳だった。あのひとに出会うまで十六年もかかってしまったという気持ちは、後悔に少し似ている―」。
 

本の要約

「十六歳だった。あのひとに出会うまで十六年もかかってしまったという気持ちは、後悔に少し似ている―」。本城えりが電車の窓越しに、賀集玲子の姿を見初めたのは、高校一年のことだった。玲子に憧れ、近づき、ひとつになりたいと願うえり。その強すぎる思いは彼女自身の人生を破滅へと向かわせてゆく。読み始めたら止まらない、衝撃作。

朝倉 かすみ (アサクラ カスミ)
北海道生まれ。北海道武蔵女子短期大学卒業。2003年「コマドリさんのこと」で第37回北海道新聞文学賞を受賞。04年「肝、焼ける」で第72回小説現代新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

弊社は朝倉かすみ先生の大ファンで、ラブコールを出版社に伝えたところ、なんと、先生のご来店と発展致しました。
  先生お忙しいところ、お時間を頂きましてありがとうございます。これもずーっと先生のファンです。
  2Fで「朝倉かすみ全店フェア」開催中!サイン本は文庫版「ほかに誰かいる」先着20名様です。(2008/11/10より)

▼ その他著書紹介
  そんなはずない 角川書店 / ほかに誰がいる 幻冬舎(単行本) / 肝、焼ける 講談社など

オススメな本 内容抜粋

あのひとのことを考えると、わたしの呼吸はため息に変わる。
十六歳だった。
あのひとに出会うまで十六年もかかってしまったという気持ちは、後悔に少し似ている。
眠れない夜よりも長いわたしのため息は、いつか、あのひとに届くのだろうか。

わたしは鳩の鳴き声を聞いていた。雨のふる日は、旧い校舎の廊下の壁から鳩の鳴き声
が聞こえてくる。ひとの近づく気配を感じ、わたしは壁から耳を離した。向こうから、
四、五人の集団が歩いてくる。笑っているなかに、懐かしい顔があった。なぜ、懐かしい
のかわからなかった。すれちがったあとで振り返ると、二日前のできごとがまぶたの裏を
過ぎていく。
わたしはプラットフォームへの階段を駆け上がっていた。空がぶれながら大きくなっ
た。車ひだのスカートが腿にまとわりつき、埃のにおいも立ってきて、どちらもひどくわ
ずらわしかった。乗るはずだった電車の出発時間が迫っている。改札時問は終わったばか
りだったので、まだ、間に合うかもしれなかった。視界の右すみに山吹色の電車が入って
きた。もう、動き始めている。わたしの足が遅くなった。轟音をひびかせ、加速する電車
を横目で見ながら、最後の数段をゆっくりとのぼった。プラットフォームにでたら、ひと
りの乗客がせりだして見えた。最後尾。乗降口。ガラスにこめかみをあてているひとがい
る。目が合った、と、思ったら、電車が走り去った。風を吹きあげ、わたしの前髪をあお
っていった。
あのひとだった。あのひとも振り返っていた。目で驚ぎ、目で笑い、かぶりを振って、
首をもどした。その横顔をわたしは見ている。からだが前に傾いて、床が湿った音を立て
た。手の甲をひたいにあてて、うつむいた。斜めに目を上げると、向かいがわに窓があ
る。六月の夕方だった。空はまだ明るかったが、遠くのほうに深い青がひそんでいた。ぼ
やけて見えるのは、わたしの目に水の膜が張っているせいだ。まばたきをしたら、涙が落
ちた。


(本文P. 5〜7より引用)


▼この本の感想はこちらへどうぞ。 <別ページでご覧になれます

e−honでご注文
BOOKSルーエ TOPへリンク
 ★ 会員登録はこちら(1500円以上で宅配送料無料)⇒
このページの画像、引用は出版社、または著者のご了解を得ています。
当サイトが引用している著作物に対する著作権は、その製(創)作者・出版社に帰属します。
無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。
Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved.