本当に強い人、強そうで弱い人
 
  職場で、家庭で、友人関係で・・・・なんとなく”生きづらさ”を感じているあなたへ─  
著者
川村則行
出版社
飛鳥新社
定価
本体価格 1500円+税
第一刷発行
2001/5/7
ISBN4−87031−461−4

はじめに ─ 強くなりたいあなたへ ─

何かに悩んでいるとき、ストレスに押しつぶされそうなとき、心が傷ついたとき、人は誰でも自分の弱さに直面する。
どうしょうもなく弱い自分に出会い、苦しくてたまらなくなる。そんなとき、きっとこう思うのではないだろうか。
「もっと強くなりたい」

「弱さに負けない強さを身につけたい」と。
しかし、強さとはなんだろう。
本当に強いとはどういうことだろう。

世の中には一見「強そうな人」がたくさんいるが、その強さは果たして本物だろうか。
私がここでわざわざこんなことを言うのは、強さには本物の強さと偽物の強さがあると考えるからだ。
たとえば、頑強で筋力のある、見るからに強そうな男性がいたとしよう。

彼は努力して自らの体を鍛え、強い自分を手に入れた。しかし、もし彼がその筋力にものをいわせて、妻や恋人や周囲の人を、自分の思うがままに支配していたとしたら、その強さは本物の強さといえるだろうか。
いや、その強さは表面的なものにすぎず、むしろ彼の内面の弱さをカモフラージュする道具でしかない。

弱さの象徴とさえいえるだろう。あるいは、どんなときも愚痴をこぼさず、泣き言を言わず、弱みを見せない人がいる。
傍目には強い人と映るし、本人もまた、自分は強い人間だと自負している。
ところが、そんな人に限って、何かの拍子に心や体の病気になってしまうことがある。

自分の弱さを直視せず、それに蓋をしたまま強い自分を演じ続け、あるとき疲れ果ててポッキリ折れてしまうのだ。
ただ強くなればいいというものではない。強さの中身が重要なのだ。本当に強くなりたい。
あなたが心の底からそう思うなら、本当の強さとはどんなものかを、まずはきちんと知っておく必要があるだろう。

本書では、「強さ」が重要なテーマになっている。
もっと正確に言うと、「弱さ」よりも「強さ」のほうに力点を置いた。
これは次のような理由からだ。

心の病気を治すにはいろいろな治療法があるが、その中に、精神分析と行動療法という二つの代表的な治療法がある。
精神分析は、フロイトの流れをくむもので、アメリカでは一九七〇年代に盛んに行なわれた。
が、それ以降は下火になり、現在では行動療法のほうが多く用いられるようになっているという。

その一因となったのが、ある研究結果だった。
精神分析と行動療法のどちらが科学的により有効かを調べたら、行動療法のほうが効果的だという結果が出てしまったのだ。
では、なぜその研究で、精神分析はあまり効かなかったのだろうか。

結論を先に言うと、原因を知ったからといって、必ずしも心の病気は治らないという側面があるからだ。
仮に、あなたに百の欠点や弱点があったとしよう。それが精神分析を受けた結果、すべて明らかになり、心の病気が起きた原因も突き止められたとする。

ならば、それでよくなるのか?治るのか?残念ながら、答えはノーだ。
なぜなら、たいていの人はその列挙された百の欠点や弱点を受け入れて、本当の自分の姿を見つめられる強さを持ち合わせていないからである。

たとえば、あなたはクラスの人気者だと思っていた。あるいは会社でも人に好かれていると思っていた。恋人にも愛されていると思っていた。周りの人は自分を理解してくれていると思っていた。

ところが、それは自分勝手な思い込みで、本当はみんなにちょっとうまく扱われていたにすぎないとわかった。自分が思っているほど、周囲の人は自分のことを理解していないとわかった。

そういうことを知ってしまったら、予期せぬ自分の本当の姿を見てしまったら、あなたはいったいどうなるだろうか。
たいていの人は、目の前に差し出された厳しい現実に耐えられず、かえって意欲が萎えてしまうだろう。下手をすると、心の傷まで深くなってしまうかもしれない。

つまり、自分自身の、真に弱い姿が明らかにされたとき、それを受け入れる心の強さがないと、現実を乗り越えることはできないのだ。
もちろん、自分の弱さを知ることは大切だ。弱さを知ることが心の問題を克服するスタートラインになるというのは、紛れもない正論である。
心の病があるならば、その原因が何かをきちんと知っておく必要もある。

しかし、そこから強くなっていくためには、自分がどんなに弱い人間か、どんなにダメな人間かということをすべて知ることが重要なのではない。
むしろ、一度弱さを知ったら、そこから強くなっていくにはどうしたらいいかを考えたほうがいい。

自分の弱いところ、ダメなところを数え上げるのではなく、強さというものを知って、それに自分を近づける努力をしたほうがいいのだ。悪いことより、いいことを考える。
何かを好きになって、それをやってみる。そっちのほうが心の健康にはずっといいと、私は考える。

 

 

 

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