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六人の超音波科学者
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著者
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森博嗣 | |||||
出版社
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講談社NOVELS / 講談社 | |||||
定価
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本体価格 820円+税 | |||||
第一刷発行
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2001/9/5 | |||||
ISBN4−06−182204−7 |
プロローグ ずっと上り坂だった。 少なくとも銀河系へ向かっている、よりは多少は現実的だろう。 この車はエンジンも後ろにある。 「きゃあ!」 香具山紫子の声である。 小鳥遊練無の声はかなり高い。 「え、わざとなの?」 「な、わざとやろ?白状しいな。ここ、触ったやん」 「ちょっと、わざとって何がさ。どこ触った?」 「なんちゅう言い草やん、それ。どさくさに紛れて:…」 「おっとと」 「何、今の!完壁にヘディングじゃん」 「ちゃんと掴まってなあかんなあ、ごめんあそぱせ。お互いに気をつけましょうね」笑いながら紫子が言う。 「そりゃま、車もな、右にばっかり曲がってられへんしな。右回転だけやったら、ループぐるぐるの螺旋階段、で右ネジの法則やもん、左手のフレミングはんって、どうよ?君、理系やさかい、お手のもんやろ。あ、これがホンマのお手のもんやで」 「あれは、私も完壁お手上げやったわ、熱伝導率との違いが今イチ私の感覚にフィットしやへんわけ」 「おおそうか、そういう君かて、女やったら、ただじゃおかんで。そんなも、今頃、どんだけいびりたおされてると思う?毎晩泣きべそかいてな、すすり泣くぞ」 「自分っていうのは、僕のこと?」 「ポリシィ?ようわからんけど、これは自動操縦なんよ。ほなら、君の人格はどこにあるん?ようそんなちらちらのエッチな服を着よるで、ホンマに。誰に襲われたいんや?」 「どういう意味、それ」 紅子が助手席から振り向いた。 紫子が身を乗り出してきいた。 「たった今起きました。後ろが煩いもんだから」紅子はシートにもたれて溜息をつく。 「すみません」紫子も謝った。 「これって雲の中なんよね」紫子が窓の外を見て言った。
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