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東大生はバカになったか
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著者
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立花隆 | |||||
出版社
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文藝春秋 | |||||
定価
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本体価格 1714円+税 | |||||
第一刷発行
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2001/10/30 | |||||
ISBN4−16−357850−1 |
はじめに 本書は、ここ数年間に、私がさまざまのところで、大学問題、大学教育の問題(学力低下問題、教養教育の問題)について書いたり語ったりしてきたことをまとめたものである。 まず最初に、ここに集められたものが、どのような経緯と意図のもとに書かれた(あるいは語られた)ものであるかを説明して、解題としておきたい。 私は九六年から九八年にかけて、東大教養学部で授業を持っていた関係上、大学の教育環境の劇的変化(いわゆる学力低下問題)にいち早く気がつく立場にいた。
本文を読むとわかるが、中等教育における理科の内容切り下げは、かなり前からはじまっていた問題なのだが、それが学生の質の著しい低下という形で、学内の誰の目にもはっきりした形であらわれてきたのは、九七年になってからだった。 その学生たちが社会人として世に出てくるのは二〇〇一年だから、まだこの問題(「知的亡国論」的事態)は世の中一般の人にとって、誰の目にも明らかというところまではきていない(まだ知る人ぞ知るレベル)。 学生が大学に入学してから社会人として巣立っていくまでの四年間は、一般社会からは事態が潜伏していた四年間であり、大学人の事態認知と二般人の事態認知の間のタイムラグの四年間である。 これから日に日に、「知的亡国論」に書いたような事態の進行が誰の目にも明らかになっていくだろう。 松田助教授たちのグループ(コ局等教育フォーラム」)では、この問題のこれ以上の悪化を食い止めるべく、一般の人々に事態をもっと認識してもらおうと、九八年はじめに、東大駒場に多くの大学人、教育関係者、ジャーナリストなどを集めて、この問題を議論する一大シンポジウム「日本の理科教育が危ない」を開いた。 私もそれに出席したが、そこで聞く話は唖然とする話ばかりだった(シンポジウムの内容は、『日本の理科教育が危ない』〈学会センター関西/学会出版センター〉にまとめられている)。 この論文は、世の中に大きな反響をもたらした。 それからしばらくの間、同趣旨の話を求められてさまざまな場に呼ばれたり、執筆を求められたりしたので、都合がつくかぎり、それに応じた。 衆議院文教委員会の「高等教育に関する小委員会」に参考委員として呼ばれたこともあれば、政府の科学技術総合会議政策委員会の「21世紀の社会と科学技術を考える懇談会」に呼ばれたこともある。
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