自称変わり者の寝言。
「私、毎日みんなと同じ、こんな生活続けてていいのかなあ。みんなと同じ教室で同じ授業受けて、毎日。だってあたしには具体的な夢はないけど野望はあるわけ。きっと有名になるんだ。テレビに出たいわけじゃないけど。」
光一にそう言い終わった後私は、これは甘ったるいなあ、とぼんやり興ざめした。
光一はそんな私を世の大人の代表として散々なじってくれた。
「バカだねみんなと同じ生活が嫌なんて一体自分をどれだけ特別だと思ってるんだ努力もせず時間だけそんな惜しんで、大体あんたにゃ人生の目標がない、だからそううだうだと他の何百人もの人間が乗り越えてきた基本的でありきたりな悩みをひきずってんのさ。」
眉をひそめ八重歯を唾液で光らせた光一は喋る喋る、痛烈な批判を私に向かってまだまだまくしたてた。
このカツを最近有難く感じる、五臓六胴に沁みる、目をぎゅっとつぶって「もっと言って」とお願いしたら、光一はひるんで口をつぐんだ。
その瞬間隣の席で全然別の話題で盛り上がっているクラスメイトの女の子達が、地面を揺るがすくらいの大爆笑をぶちまけた。
光一はそれに負けじとすぐまた声を張り上げてお喋りを始める。
「そんな無駄なこと考えちゃうのはね、あんたが疲れてるせいだよ。朝子この頃忙しそうにしてたじゃん、予備校のかけもちのせいで。あれもうやめなさい、勉強は一人ででもできるんだから。
あと、忙しい自分が嬉しい、好きって思えるようになれればさらに楽になれるかもしれないね。
口では、私この頃ハードスケジュールなの〜なんて言ってため息つくけど実はそんな充実した日々を送っている自分に満足してる、そういう愚か者に自分を人格改造したら疲れてんのが快感になってきっと朝子のそのくだらん野望も消し飛ぶって。
なんで言い切れるかっていうとその生き方を実践してるうちのナツコが幸せだからだよ。あいつハードスケジュールが自分の有能さと人気の証だって勘違いしてて、それが唯一の娯楽さ。
利用されてるだけなのに、それに気づかないでつまらない粒々の仕事全部押し付けられて緊張して、それで本格的に疲れがたまってきたらスポ根みたいに、私負けないっ、て涙溜めだすんだから、本当いつも自分が主人公で真性マゾ、」光一はどんな話題で話をしていても、気がつけばナツコの悪口話にすり替えている。
いつもなら聞いてやるのだけれど睡眠不足極まれる今は我慢ならなくて、私は頭を机に鈍くぶつけて、その音で光一を黙らせた。
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