シネマ坊主
著者
松本人志
出版社
定価
本体価格 1000円+税
第一刷発行
2002/02/05
ISBN4−8222−1733−7
松本人志 初めての映画評論集 ハリウッド大作からミニシアター感動作まで全70本をぶった斬り!!

ダウンタウンの松ちゃんこと松本人志が日経ENT!誌上で好評連載中の“激辛”映画批評が1冊の本になりました!巷の話題作/問題作を彼独自のシュールでシニカルな視点、ユーモアと皮肉タップリの毒舌でブッタ斬り!!映画の“通”なら思わず納得、苦笑するエッセンスが満載です。

 

 

あとがき


なんにしても中途半端なものが一番つまらんですね

この本は、日経エンタテインメント!で1999年から連載している映画評コラムの約3年分をまとめたものです。
映画評をやってるからといって、誤解してほしくないのは、僕自身は決して映画好きでもなんでもなくて、どちらかと言えば、嫌いなほうだということです。
連載のために映画を見てても、しょっちゅうだるいなと思うし、ビデオを借りてきても、もう1時間くらいで消したくなることのほうが多い。
たぶんあまり好きじゃないんやろうな、と思います。
とは言いつつも、やっぱりいいシーンがあれば印象に残るし、それは自分にとってもマイナスにならんやろうし、ということで、まあなんとなく見続けてるんですね。
連載をやってるのも、自分の好みだけで選んでいたらおそらく一生見ないようなタイプの映画を見る機会がつくれると思うからで、もう見たくてしようがなくて見た、というわけじゃ決してない。
だから、監督や俳優に対する思い入れも全くないし、ただ2時間かけて見る価値があったのかどうか、ということだけで評価をしています。
そこはわかってもらった上で、読んでほしいですね。
文章や採点は、連載で掲載した時のものそのままです。
今見直してみたら、違う評価になるものもあるかもしれませんが、見た当時はそう思ったということで、全くいじってません。
点数をあらためて振り返ってみて思うのは、映画というものは、どういう順番や状況で見たかによっても印象がずいぶん違ってくるということです。
『奇跡の海』なんかは、同じ監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を見た後でDVDを見たので点数が高いけど、順番が入れ替わってたら、もっと評価が下だったかもわからない。逆に、『カルネ』は『カノン』の前に見ていたら、もっと点数がよくて10点満点だったかもしれないし。
取り上げた映画には、映画館で見たものとビデオで見たものが混じってますけど、やっぱり映画館に行くといいですね。
ちゃんと覚えてる。
たとえば友達と「映画見ようか」ってなった時でも、「あれはどこでやってるの」って聞いて、「なんとかシネマ」とか言われてもわからないけど、「何々を見たとこですよ」と言われたら、思い出すじゃないですか。
それって、すごいことじゃないでしょうか。
映画館に行くというのは、ちょっとしたイベントなんですね。
だから、やっぱり映画は映画館で見たほうがいいですね。
それにしてもおもしろいもので、思い出してみると、皮肉なことにというか、0点とか1点の映画のほうが、5点とか6点の映画よりもよく覚えてますよ。
これは何なんでしょうか。
やっぱり点数が低い映画の時は、腹が立ったからなんでしょうね。
でも、考えてみれば、それは大事なことじゃないですか。
いつの間にか忘れられていく映画のほうがはるかに多いなかで、どんな形にせよ、覚えてもらってるものをつくれてるというのは。
『ドリブン』なんて、ホンマにクソおもろないなあ、と思ったから、ものすごくよく覚えてます(笑)。
ところが、5点の『π』(パイ)とか『ウエイクアップ!ネッド』なんてあんまり覚えてないし、今となっては、そういやそんな映画もあったかなあ、くらいのもんです。
だから、点数が高い映画は自信をもっておすすめしますけど、低いものも見ればそれなりに記憶に残るんじゃないでしょうか。
まあ、間違いなく腹が立つでしょうけど(笑)。
お笑いでもなんでもそうですけど、中途半端なものが一番つまらんということですね。

(本文 あとがきより引用)

 

 

 

 

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