水をひらく手
著者
横山未来子(よこやま・みきこ)
出版社
短歌研究社
定価
本体価格 2500円+税
第一刷発行
2003/01
・音のなき世界にありて唇を読むごとく君を視つめてゐたり
・逢ひしことの温度を永く保たむととざせり耳をまなこを喉を
・君が熱を出してゐるとふ夜に聴くピアノの音ひとつひとつの水紋
・秋の水に顔濯ぎをり身体からにじめるものの熱を薄めて
・今日を待ち張りつめてゐし胸ならむ魚跳ねて水のひかり割れたり
著者20代後半の作品367首を収録。

朝日新聞 夕刊 <2003/2/3>

だからといって、私は定型詩に自由がないというつもりはない。
自由詩は形式がないことによって、定型詩は形式を持つことによって自由を目指す。
たとえば横山未来子の新歌集『水をひらく手』(短歌研究社)に私は定型を持つことによるみずみずしい自由を享受した。

領したきものとして見つほつほつ
と沫雪ふれる日の人の素手
.君ゆゑに独りのわれか繰りかへし
硝子にあたる蜂の羽音す
ペン拾ふとふいに屈みてわが肩よ
り低くなりたる頭をかなしめり
春嵐にきしみてをらむその髪を濯
ぐべくわが川ゆたかなれ

胃頭の「素手」から四首挙げたが、透明な光に満ちた苦しいまでに、美しい歌が歌集全体に呼吸していて、どこかエミリ・ディキンソンの小さくて大きい詩たちに通う深い拝情を思わせる。
デイキンソンの詩が厳密な定型詩であることも思い出しておこう。

 記事詳細

毎日新聞夕刊 <2003/1/15>

・横山未来子歌集言『水をひらく手』(短歌研究社)
横山歌集は20代後半の作品を集めた第2歌集。この若さで自己の内面を見つめ.硬質の言葉で祈りに近い心性を表現するのは昨今珍しい。

 

版元は、短歌総合誌『短歌研究』などを出版しているところで、 私の歌集も書店で注文があれば配本されますが、 実際に一般の方々に手に取ってもらえる機会がなかなかありません。
歌集は、短歌の作者どうしが読み合うという形になってしまっているので、 一般の、特に若い方の目に触れる機会がもっと増えてくれたら、と願っております。

 


横山未来子(よこやま・みきこ)

1972年生まれ 吉祥寺本町在住
1994年 短歌結社「心の花」に入会。佐佐木幸綱に師事。
1996年 第39回短歌研究新人賞受賞。
1998年 第一歌集『樹下のひとりの眠りのために』(短歌研究社)出版。
2003年 第二歌集『水をひらく手』(短歌研究社)出版。
http://www007.upp.so-net.ne.jp/mizunokajitsu/

 


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