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 天の瞳 あすなろ編2
著者
灰谷健次郎/著
出版社
角川書店
定価
本体価格 1500円+税
第一刷発行
2004/01
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ISBN 4-04-873512-8
 
倫太郎と仲間を描き成長とは何かを問いかける、永遠に読み継がれる灰谷文学の名作。
 

本の要約

生きるとは…学ぶとは…ますます快調の倫太郎を描く、灰谷健次郎、感動のライフワーク第八弾。

おふみおばあさんが亡くなって身の振り方を案じなくてはならなくなったシュウちゃん。幼い頃からの友人だった倫太郎たちは、一緒に学び生きていけるための「学校」を探すことにした。一方、倫太郎とミツルは暴力グループ赤竜隊のボス郷二と話し合い、学校を良くしていくための接点を見出そうとする。倫太郎たちがつるむのでなくお互いの自立しながら行動するようになっていくのにつれて〈,先生たちの行動にも変化が出始めた……。 .命の共鳴を描く灰谷健次郎、感動のライフワーク第八弾。



オススメな本 内容抜粋

おふみばあさんが亡くなって、たちまち身の振り方を案じなくてはならなかったのは、シュウちゃんのことである。
とうとうくるべきものがやってきたという思いが倫太郎をはじめシュウちゃんに繋る子どもたち全員にあって、みな、気が重かった。
シュウちゃんに、それを決める主体的な能力はない。
しかし、シュウちゃんの意志は尊重しなくてはならないと、子どもたちの誰も思っていた。
が、事はそうかんたんに運ばたい。
「ワシ、ここで暮らす……」
それとなくシュウちゃんの気持を打診してみるのだが、シュウちゃんはその一点張りだ。
無理もない、と倫太郎たちは思う。
シュウちゃんは長い年月、この粗末な駄菓子屋で暮らした。
掘立て小屋に近い家ではあっても、シュウちゃんにとって、ここは世界のすべてである。
おふみばあさんが案じていた世間の狭いシュウちゃんだからこそ、いっそうここは、かけがえ のない場所なのだ。
それが倫太郎らに痛いほどわかる。
「ワシ、ここにおる……」
と、いわれてみると、子どもたちに返す言葉はないのであった。
民生委員のデメ金はいい放つ。
「施設へいくのが、いちばんいいの。それしかないやないの。
人間は、それぞれ納まるとこに納まるのがベストや。
しあわせというものは、そういうもんや。
人生、下手に逆ろうたらあかん。束の間のしあわせより、将来のしあわせを考えるのが大人というもんや」
倫太郎たちは、こっちの方にも返す言葉がない。
「あのオバハン、悩みというもんがないのソか。人生に悩みがない奴ほど手に負えんもんはないぜ」
ミツルが、ぶつぶついうくらいが、せいぜいの抵抗なのだった。
芽衣を前にして倫太郎は、ぽつりといったことがある。
「シュウちゃん、昼間は店にいて、夜、オレの家へ帰って寝るというのはどうやろ。あかんかァ……」
芽衣はいった。
「あなたのやさしさはわかるつもりだけど、人にはそれぞれ領分というものがあることを忘れたらだめよ。シュウジさんとあなたは、どんなつよい友情で結ばれてもいいけれど、身内のようにそうしてしまったら、人同士のけじめというものがなくなってしまうのよ」
倫太郎はしばらく考え
「わかった」
といった。
いくら考えても名案がないのだった。
そんな子どもたちのところへ、庵心藤子から呼び出しがかかった。
一同そろって出かけた。
「せっかくの日曜日に、足を運んでもろうてすまないねえ」
庵心藤子がそういうと、タケやんはすかさずくちを入れた。
「庵心さんのためなら、たとえ火の中、水の中……」
「あら、ま……」
といって庵心藤子は笑った。
「こいつ、心にもないことを平気でいう奴やから、相手にせんといて」
虫月ポソがいった。
「おまえ。そういうことをいうてええの?」
「ええの」
「まがりなりにも、おまえとオレは親友やねんで」
「そんなこと誰が決めてんP」
「誰がって……。小さいとぎからずっといっしょやったやろが」
「そやさかい、ええかげん迷惑しとるわけや」

(本文P.3〜5より引用)


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