2011/06/11 山崎ナオコーラ先生にご来店していただきました。お忙しいところ、ありがとうございます。 これも、弊社BOOKSルーエは、 山崎ナオコーラ先生を応援します! また、遊びに来てください。 ルーエ一同 −−−−−−−−−−−−−−−−−− 山崎ナオコーラ 2004年、「人のセックスを笑うな」で第41回文藝賞受賞。同作で第132回芥川龍之介賞候補。2006年、『浮世でランチ』で第28回野間文芸新人賞候補。2008年、「カツラ美容室別室」で第138回芥川賞候補、『論理と感性は相反しない』で第30回野間文芸新人賞候補。2009年、「手」で第140回芥川賞候補、『男と点と線』で第31回野間文芸新人賞候補。2010年、『この世は二人組ではできあがらない』で第23回三島由紀夫賞候補。 國學院大学兼任講師。
プロローグ
会社員をしながら書いた小説が新人賞を受賞したので、そこから社会的に「小説家です」 と言うようになった。もう五年目になるのだが、先が見えない。小説について考えることを ライフワークにしたい、と考えているのだが今はまだ、山の裾野にいる。 低次の段階にいる私宛てにときどき、エッセイの依頼がくる。 その度に、「エッセイとは、なんだろう」と考える。 私はエッセイストではないから、エッセイに関しては、プロの仕事ができないような気が する。 あくまで、「小説家の書くエッセイ」になる、ということだ。 私が今までで一番力を入れたエッセイは、朝日新聞の土曜版で連載をした「指先からソー ダ」というものであった。一回分は、原稿用紙二枚と四行、という短いエッセイだ。これは、 まだ海のものとも山のものともつかない新人作家の私を、新聞記者さんが大抜擢して、書か せてくれることになったのだろう。「エッセイは書けるかどうかわからない」というのは、 そのときもそう思ったのだったが、新聞に文章を書かせてもらえるというのは、僥倖である。 そこで、「小説家が書くエッセイ」を一年半ほど必死で綴った。「指先からソーダ」は、なか なか評判も良かったように思う。その連載が終わったあと、一年間ほど、エッセイの仕事は 全てお断りして過ごした。小説を書くことに集中したかったからである。本の販促に関する 仕事はしたが、それ以外の仕事はお断りさせてもらって、小説のことだけ考えた。 一年が経つと、頭が小説の形になってきた気がした。 次の年、ニカ月にひとつくらいは、原稿用紙三枚ほどのエッセイを、書くことにした。 さらに一年が経った。 今なら、少し遊びのある仕事もできるかもしれない。 しかし、「前にやったように……」と考えながら仕事をするのは、社会に対して失礼であ る。 @私は、「指先からソーダ」とは違うことをやりたい。 Aそれと、「自分は小説家」ということを基盤に置きたい。 Bそして、「いつかは書籍化」を目指したい。 (私は、本の形が大好きなので、小説を書きながらも、書籍になったときの印象を想像して 書く。エッセイだってやはり、「本にするときに、どうなるか?」を第一に考えたい)。 その道筋で新しい仕事にチャレンジしたい、と考え、「Webちくま」で連載エッセイを 書くことに決めた(注”このエッセイの初出は、「Webちくま」という筑摩書房のサイト である)。 さて、連載タイトルである。「男友だちを作ろう」。どうしてこうしたかと言うと、まず、 小説家としての欲があった。 小説を書くにあたって、人と出会うことは大事である。 もちろん、決して私は出会った人たちや出来事を小説に映すことはしてこなかった。想像 で文学を作っている。だが、人とたくさん会ったことで、文学は生まれた。 人間は人間に会わないと! ああ、人に会いたいなー、今度の連載で、「人に会う」という要素を入れられたら私にと ってありがたいんだけどなー、と思い、駄目元で、「連載エッセイの件ですが、『人に会って、 スケッチ風のエッセイを作る』というのは、いかがでしょう?」と提案してみた。
(本文P. 7〜9より引用)