恋敵と食べるごはんは、けっこう、美味しい。同じマンションでルームシェアをしている、まひるとわたし。共通点は、同じ男性の愛人であること。大ヒット作『ハニービターハニー』の加藤千恵、初の本格長編小説。 わたしとまひるは同じマンションに暮らしている。しかし、私たちの関係について説明するのは、おそろしく厄介である。高級マンションの一室で暮らす、わたし・奏絵とまひる。一緒に住んでいるにもかかわらず、わたしたちは、姉妹でも友達でもなかった。ふたりの共通点は、同じ男性の愛人であること。「この日々が永遠じゃないことはわかっている。けれど、永遠なんて、どこにもないのだから、それで構わない」。そう割り切って始めたはずの奇妙な共同生活。だが、食事をともにする機会を重ねるうち、奏絵は、まひるとの生活を、大切なものへと思い始めている自分に気づく――中華風スープ、冷やし豚しゃぶ、ビーフシチュー、桃、ピーナツバターとツナのサンドイッチ、オムライス、そうめん、納豆汁、お粥――恋敵と食べるごはんは、どうしてけっこう美味しいんだろう。愛しすぎることも、憎みすぎることもできないふたりの生活を、丁寧な筆致で描く。大ヒットとなった小説集『ハニー ビター ハニー』以後、小説家として活躍の幅を広げ続けてきた著者が満を持して放つ、初の本格長編小説。