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著者
甲野 善紀/著 井上 雄彦/著
出版社
宝島社
定価
税込価格 1260円
第一刷発行
2004/05
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ISBN 4-7966-4057-6
 
本当の武士道がわかる本!! どうして、武士の身体と心を 格好いいと思ってしまうのだろう
 

本の要約

井上雄彦×甲野善紀の注目の対談本!漫画家「バガボンド」「スラムダンク」著者・井上雄彦と、「武術」の伝承者・甲野善紀が武士道について熱く語り合い、その真髄に迫る。豪傑たちに学ぶ勝利学や、写真解説付で分かりやすく説明したスポーツへの応用法など、武士道のすべてが詰まった注目の書。



オススメな本 内容抜粋

はじめに

『バガボンド』の連載を始めるにあたって、武術について勉強しようと、武術家である甲野さん の本やビデオを精力的に集めてきました。しかし、武術の身体の使い方は、とても繊細で微妙 なものなので、なかなか理解するのが難しい。ビデオを見ても、普通の動きとあまり変わらないのに、ほんの少し触れただけで、相手が一瞬で崩れてしまう。
「これは、どういうことなんだろう?」と、いくら考えてもやっぱりわかりませんでした。
今回、甲野さんとの対談の話が持ち上がったとき、[技をかけてもらえる」と、まずはそれがうれしかった。ただ、心配だったのは「そもそもぼくに甲野さんに対して語れる言葉があるだろうか」という点でした。
人には出会うタイミングがあると思います。『バガボンド』を描いている漫画家ということで、これまでも甲野さんとお会いする機会があったかもしれません。あるいは「いまから武蔵を漫画で描こうと思う者ですが、いろいろ教えてください!」と意気込んで、甲野さんの道場の門を叩いてもよかったのかもしれない。
しかし、実際は今回、こういう形で出会うことになりました。
ぼくは、そのことに意味があると思いたいのです。
以前のぼくならば、ただ「すごい!」と驚いただけかもしれません。
もちろん、いまのぼくだって十分な準備ができていたとは思いませんが、本当に幸せな出会いだったとひしひしと喜びをかみしめています。
何より自分の身体で、甲野さんの技を受けられたことがうれしかった。
実際に受けてみると、そのすごさが、文字通り身体で理解できます。
技の原理は本文の中で甲野さんが解説してくださっているので、そこを読んでほしいのですが、ぼくに言えるのは「瞬間的にものすごく大きなエネルギーが身体を通っていくのがわかる」ということです。
その衝撃を一回でも身体で感じているかどうかは大きい。
漫画を描く上でも、体感があるかどうかでまったく違った表現になると思います。
もしかすると、これからぼくが描く身体は変わってくるかもしれない。
自分でも楽しみです。
「武士とは何か」について考える機会となったことも大きな収穫でした。
ぼくはバガボンドを描き始めた当初、武士の生き様を描くつもりはなく、人間を描こうと考えていました。
初めは戦いのシーンも極力描くまいと思っていたのです。
しかし、物語が進むにつれ、ぼく自身が剣術に出会い、生死を見つめ、武術、戦い……と興味の対象が広がっていきました。
ですから、武士となると、まだ作品の中で出会っていない部分になります。
とくに社会のなかの武士となると、深く考えたこともない。
だから武士をテーマとしたところでは、「話せることがないな」とちょっと不安に思っていました。
ところが、古の武士の話となると、甲野さんの口から様々なエピソードが次から次に飛び出してくる。
そのどれもが痛快で、おもしろい。
しかも、甲野さんは達人たちの話を実に楽しそうに語られるんです。
そんな話を聞いているうちに、だんだん刺激を受けてきて「描いてみたいな」と、ぼくは思ってしまった。
武士というテーマは避けて通ろうとしていたところに、「踏み込んでみたい」という気がしてきたんです。
これも、うれしいことでした。
楽しそうといえば、甲野さんは身体を動かしているとき、すごく楽しそうに見えます。
河原で写真撮影をしたのですが、甲野さんはその合間にさえ、河原の石を不安定に積み上げて、そこを走り抜ける練習を始めました。
こんな風に言っては失礼なのですが、その姿がまるで子どものようなのです。
甲野さんは常に武術のことを考えている。
何を見ても、武術と結びつく。
つまり回路が常に外側に向かって開いているんですね。
ぼく自身は最近、自分とどう向き合うべきかが見えづらくなって、ちょっと危機感を持っていました。
でも、まっすぐに武術に向かう甲野さんの姿を見て、希望が湧いてきました。
その意味でも、今回の対談では本当にたくさんのものを甲野さんから与えていただいたと思っています。
内容は武術の話だけでなく、様々なテーマを取り上げています。教育や文明の未来にも話が及んでいますが、決して難しくはないので、心配せずに読み進めてください。
武術を趣味にしている人だけなく、むしろ初めて甲野さんに触れる人たちに、この本を手にとってほしい。
ぼくが、その案内役になれれば、これほどうれしいことはありません。

二〇〇四年三月

井上雄彦

(本文P. より引用)


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